スチレン・ポリスチレンの安全性

発がん性の評価

スチレンモノマーは多くの機関が発がん性を評価しており、最新の分類では複数の機関が発がん性はないと評価しています。

なお、国際がん研究機構(IARC)は2002年の評価においてスチレンを「発がん性がある可能性がある物質(カテゴリー2B)」に分類していますが、国際化学物質安全性計画(IPCS)は、2002年以降に発表されたマウスと人の発がんメカニズムの差異に関する研究結果に基づいて、スチレンは発がん性の証拠がないと評価しました。

さらに、EUで最近実施したリスクアセスメント報告書(2007年12月公表)では、「スチレンは発がん性物質に該当しない」と評価されました。

公的機関によるスチレンの発がん性分類

機関名(アルファベット順) 分類
ACGIH(米国産業衛生専門家会議) A3(確認された動物発がん性因子であるが、ヒトとの関連は不明)
EPA(米国環境保護庁) 未評価(評価中)
EU(欧州連合) 発がん性物質でない
IARC(国際ガン研究機構) 2A(ヒトに対しておそらく発がん性がある)
MAK(ドイツ有害物質評価リスト) 5(許容濃度以下では発がんの恐れはない)
NTP(米国国家毒性プログラム) R(発がん性があるとする合理的理由がある)
日本産業衛生学会 第2群A(ヒトに対しておそらく発がん性があると判断できる(証拠が比較的十分))ただし暫定
NTPおよびIARCの評価を踏襲している日本産業衛生学会は、スチレンモノマーを発がん性の疑いのある物質としています。

主要な機関の発がん性評価の分類基準

ACGIH EU(CLP) IARC MAK NTP 日本産業衛生学会
A1
確認されたヒト発がん性因子
1A
ヒトに対する発がん性が知られている
1
ヒトに対して発がん性がある
1
ヒトにがんを誘発し、がんのリスクに寄与すると考えられる
K
ヒト発がん性因子であることが知られている
1
ヒトに対して発がん性があると判断できる
A2
疑わしいヒト発がん性因子
1B
ヒトに対しておそらく発がん性がある
2A
ヒトに対しておそらく発がん性がある
2
がんリスクに寄与することが示され、ヒトに対して発がん性があると考えられる
R
合理的にヒト発がん性因子であることが予測される
2A
ヒトに対しておそらく発がん性があると判断できる(証拠が比較的十分)
A3
確認された動物発がん性因子であるがヒトとの関連は不明
2
ヒトに対する 発がん性が疑われる
2B
ヒトに対する発がん性が疑われる
3
ヒトに対して発がん性の可能性があると懸念される
N
発がん性はない
2B
ヒトに対しておそらく 発がん性があると判断できる(証拠が比較的十分でない)
A4
ヒトに対する発がん性物質としては分類されない
  3
ヒトに対する発がん性 について分類することが出来ない
4
(省略)
   
A5
ヒトに対する発がん性物質としては疑われていない
  4
ヒトに対しておそらく 発がん性がない
5
許容濃度以下では発がんのおそれはない
   

EUにおけるスチレンの発がん性に関する評価結果

実験動物の種類 ラット(ねずみ) マウス (はつかねずみ)
経路 経口 認められない 認められない
吸入 認められない 極めて高い濃度のみ肺がんが発生
  • マウスの吸入試験でのみ腫瘍が観察された。
  • マウスの経口投与では腫瘍の増加は観察されない。
  • ラットでは吸入。経口投与とも腫瘍の増加は観察されない。

参考資料:

下記のリンクのWEBサイトにアクセスし「styrene」文字をクリック。

EUリスクアセスメントレポート
EUリスクアセスメントレポート

疫学調査の結果

広範な疫学調査によれば、スチレンの長期暴露が人の肺がんを引き起こすとの証拠はない

発がんメカニズムの研究結果

マウスに対する肺での特異的な作用は、人には関連が無く再現されない

EUの結論

マウスの発がんに関連する全ての鍵となる事象は、人では機能しないので人に起こるとは思われない。